外壁塗装に必要な存在、コーキングの役割とは?乾燥時間についても徹底解説
最終更新 : 2024.10.25
外壁塗装にはコーキングがつきものです。ですが、役割や補修の必要性については分かりづらいですよね。
コーキングは外壁塗装だけでなく、壁という建物の構造としても大事な部分です。
実際には壁以外にもベランダや屋上にも使われることがあります。
シーリングという言葉とともに、役割や補修の必要性について理解しておけば、外壁塗装のときに役立つこと間違いなしです。
外壁塗装とコーキングの基礎知識
外壁塗装でコーキングが必要といっても、まずはどんなものなのか、なにを使うかを理解することが大切です。
基礎的なことがわからないと、見積もりを見ても必要性や単価の理由も見えないからです。
コーキングとシーリングのなにが違う?
知識として重要なのが、コーキングとシーリングの違いでしょう。
調べるとどちらかが書いてあったりしますよね。ですが、いったいなんのことなのか、違いが見えてこないかもしれません。
厳密にいえば、コーキングとシーリングは言葉の意味に違いがあります。
コーキングが隙間を埋める詰め物を意味するのに対し、シーリングはふたをするという言葉になるからです。
ところが、外壁塗装を含む工事業界では、どちらも同じ意味で使われます。材料の中身も変わりません。
業者ごとに呼び名が違う程度のものです。
1液型と2液型の違い
DIYをする人なら、コーキングの1液型と2液型があるのはご存じでしょう。1成分形というのも同じです。
違いは1つにまとまっているか、2つ混ぜ合わせるかと考えて問題ありません。
1液型は、カートリッジで販売されているものがよく知られています。
効果を出すには空気に触れることが必要で、添加剤は不要です。手軽に使えることからDIYでも重宝されています。
2液型は、主材と硬化剤に分かれているため、混合しなければいけません。
硬化剤との反応がなければ固まらないため、しっかりとした攪拌が必要です。
専門業者が使いますが、着色剤も混ぜられます。着色剤が均等になれば、硬化剤も攪拌できているということです。
カートリッジでは販売できないため、専用のガンを使って施工します。
コーキングの素材
コーキングにはさまざまな素材が使われます。基材である主材で分類されます。
シリコン系
ホームセンターで簡単に手に入るタイプです。
耐熱性も耐水性も持っており、耐久性も高いコーキング材ですが、水性塗料もはじきます。
塗装はできないので、外壁塗装でも隠したい場合には向いていません。
変性シリコン系
変性シリコン樹脂を使ったコーキング材で、湿気硬化型とも呼ばれます。
空気中の水分に反応するタイプで、耐久性にも優れた材料です。
シリコン系との違いは、塗装できる点でしょう。外壁塗装で塗装をわかりづらくしたい場合に選ばれます。
ウレタン系
耐久性と弾力性を持ったコーキング材です。
特に伸縮しやすい部分に適した材料になっています。安価ですが、紫外線に対する耐性が低いのが問題です。
変性シリコン系と同様に上から塗装できます。耐候性はあまり高くないことから、屋外で使う場合には塗装が必須です。
ポリウレタン系もウレタン系と呼ばれます。
アクリル系
耐久性は高くありませんが、安価で手に入り、上から塗装できるコーキング材です。
水性のコーキング材で、内部の水分が蒸発すると硬化します。
水分が蒸発する分肉やせしやすいことから、薄く使うことが多いコーキング材です。
ポリサルファイド系
サイディングの目地にもよく使われるのが、ポリサルファイド系です。
2液による反応硬化型で、高い耐候性が特徴ですが、価格は高めになります。
耐油性持っており、高い性能を求めるときに使われるコーキング材です。
コーキングの硬化方法
コーキングには、さまざまな効果方法があります。同じように見えて、それぞれに異なる特性を持っています。
硬化方法は主に4種類がありますが、外壁に使われるのは3種類です。
湿気硬化型
空気中の水分を利用して硬化するコーキング材です。
反応を外部に求めるため、肉やせしにくいのが特徴です。
シリコン系や変性シリコン系、ウレタン系などが該当します。
乾燥硬化型
1液型によくあるタイプで、溶剤に使われている水分が蒸発して硬化する特性を持っています。
アクリル系が相当しますが、内部の水分を使うことでどうしても肉やせするため、厚みを持たせずに使うのが基本です。
混合反応硬化型
2液を混ぜて反応させるタイプです。変性シリコン系やウレタン系、ポリサルファイド系が該当します。
硬化剤との化学反応で硬化するのが特徴です。
コーキングの乾燥状態
コーキングには3つの硬化状態があります。
それぞれ特性が違い、段階によってできる作業にも差が出てくるため、注意が必要です。
1.表面硬化
コーキングの表面が膜を張ったように硬化した状態です。
すぐ下は硬化していませんが軽く触れられます。このときに指などにつくような場合には、表面硬化に至っていません。硬化面は0.5mm程度です。
2.皮膜硬化
コーキングの表面部分がかなり硬化して乾燥した状態です。
表面から2mm程度は硬化した状態で、ここまでくると塗装もできます。
ただし、強く押すと剥がれるような危険がある状態です。まだ中心部は硬化していません。
3.完全硬化
最終的に中心まで硬化した状態を完全硬化と呼びます。
全体的に強度が発生した段階で、衝撃や水をかけても耐えられる状態です。もう心配がいらない状態といえるでしょう。
コーキングの硬化時間
コーキングには、それぞれ効果段階に至る乾燥時間があります。
主なところとして、よく使われるウレタン系と変性シリコン系で見てみましょう。
ウレタン系
状態 | 乾燥時間 |
表面硬化 | 約2時間 |
皮膜硬化 | 約4時間 |
完全硬化 | 3~7日 |
変性シリコン系
状態 | 乾燥時間 |
表面硬化 | 約30分 |
皮膜硬化 | 約1時間 |
完全硬化 | 3日 |
変性シリコン系のほうがウレタン系より硬化時間が短いことがわかります。
ですが、コストは変性シリコン系のほうがかかります。
乾燥不良で起こる問題
コーキングは、完全硬化させなければいけません。
硬化の段階を間違えると、施工不良につながります。
硬化の時間を間違えて外壁塗装した場合、塗料の成分がコーキングの溶剤になり、溶けだす可能性が出てきます。
溶け出したコーキングは外壁塗装にも悪影響を与え、耐久性を下げることになるでしょう。見た目にもよくありません。
さらに塗膜もはがれやすくなり、コーキングの硬化にも問題が出て剥がれる可能性もあります。
防水性の問題も大きな影響を与えるポイントです。
乾燥させる時間を取らずに次の施工をすると、隙間ができて防水機能を低下させます。
プライマーとの接着面は残りますが、コーキング自体が切れてしまう可能性があるからです。
コーキングの寿命
外壁に使われるコーキングは、材質によって寿命が違います。
- 変性シリコン系 約7年
- ウレタン系 約10年
- ポリウレタン系 約15年
ポイントになるのは、この寿命の長さです。
近年、外壁塗装で一般化したのはシリコン系で、寿命は約7~15年です。
施工精度によってさらに劣化を抑えることもできる塗料です。
そうなると、外壁塗料よりコーキングが先に劣化します。補修しなければいけない時期が来るのです。
さらに、外壁塗装の下にコーキングが施されています。
補修するためには、外壁塗装の一部を切り取り施工しなければいけませんが、とても非効率です。
そのため、寿命の長いポリウレタン系を使うケースが増えてきています。
これにより、外壁塗装と同時にコーキングの施工ができ、足場材などの問題もクリアして費用を抑えられるのです。
コーキングの打替えと手順
コーキングの施工には手順があります。
特に外壁塗装とセットで施工しやすい打替えが重要です。
打替えとはなにか
古いコーキングを撤去し、新たなコーキングを充填する方法が打替えです。
打替えの重要ポイントは、古いコーキングを取り除くことです。
きれいに取り除かなければ、プライマーとの接着力が下がるため、施工不良につながりやすくなります。
工事手順
コーキングの打替え手順を見ていきましょう。
1.古いコーキングの撤去
既存の古いコーキングは挟まれている2面で接着しているため、両面にカッターで切れ目を入れて、引っ張り出して撤去します。
ただし、バックアップ材などに絶縁テープであるボンドブレーカーが張られていないと、3面接着していることがあるため、簡単に引き出せないこともあるので注意が必要です。
これはやってみないと分かりません。
カッターを入れた面も、薄くコーキングが残っています。これもカッターや皮スキなどできれいに撤去しなければいけません。
2.目地の清掃
撤去した目地には、さまざまな汚れが残っています。
このままでは新しいコーキングも躯体に接着せず縁が切れてしまうため、徹底的な清掃が大切です。
もうひとつのポイントが乾燥にあります。
水がつくと接着しません。さらにコーキングして密閉したことで、内部で蒸発して押し出す可能性すらあるのです。
基本は晴れた日に撤去して、その日に施工することです。
水分を含ませないためにも、この流れが大切です。
3.マスキングとボンドブレーカー
きれいに仕上げるためには、施工面の目地の横にマスキングテープを張ります。
きれいに縁を切ることができますが、溝の内側に入らないようにしなければいけません。
入ってしまうと、マスキングテープを撤去したときにコーキングをひっぱり隙間ができることがあるからです。
ボンドブレーカーを張って3点接着も防ぎます。3点接着とは、目地の両側と奥が接着した状態です。
3点接着すると、目地の干渉を防ぎ伸縮を吸収するというコーキングの目的が失われる可能性があります。
もう1点影響を受ける部分が増えて、剥がれる可能性も出てくるため、ボンドブレーカーで縁を切ることが大切です。
4.プライマー塗布
コーキング材は一定の接着力を持っていますが、長期的に見ると全く足りません。
そこで下地として専用プライマーを塗布します。
密着性を上げて隙間を作らなくするために重要な工程です。
コーキング材の材質にあったものを用意するのが大切で、刷毛を使ってまんべんなく塗布します。
耐久性にもつながるため、しっかりと塗り込むことが大切です。
5.コーキング材充填
プライマー塗布から30分以上置いて、コーキング材を充填します。
このときに注意するのは空気が入り密着しない状況を保つことです。
打設後はヘラを使ってしっかりと抑え込んで充填しますが、硬化が始まる前に慣らします。
余計なコーキングは取り除きながら、滑らかな面に仕上げて完成です。
6.マスキングテープの除去
コーキングを慣らしたら、効果が始まる前にマスキングテープを除去します。
除去しやすいようにヘラでしっかりと切り付けておくと、縁が切れやすくなり、施工面を引っ張りはがさないで済みます。
7.乾燥と養生
コーキングは効果まで時間がかかるので、完全硬化まで乾燥させることが必要です。
水がつくと問題のあるコーキングは、完全硬化したのちに高圧洗浄するのが理想的でしょう。
使うコーキング材にもよりますが、乾燥には3日程度かかりますので、乾燥した時期に施工が集中しやすくなります。
コーキングが劣化したままだとどうなるか
コーキングは必ず劣化します。時間とともに劣化するのは、どうしても避けられません。
問題は、劣化したらどうなるかです。
そのままにしても問題ないか、それともできるだけ早く補修すべきか見ていきましょう。
コーキングの劣化のサイン
コーキングには劣化を示すいろいろなサインがあります。
このサインを見逃さないようにすれば、施工するタイミングも見えてくるでしょう。
ブリード現象
コーキング材は、そのまま使うと硬くて施工に支障が出ます。
伸びが悪いと充填性も落ちるのが問題です。
そこで可塑剤を使って柔らかくして施工しますが、問題はこの可塑剤なのです。
だいたい施工から2年程度たつと、黒いしみとなって可塑剤が表面にあられてきます。
これをブリード現象と呼びますが、コーキング自体の耐久性を下げてしまうのです。
ブリード現象を避けるためには、ノンブリードのコーキング材を使うのが基本です。
そのほかにもブリード現象防止剤を塗布するのも効果があります。
肉やせ
コーキング材の弾力性が失われてくると、だんだんとボリュームが落ちます。
このような体積の減少がみられることを肉やせと呼びますが、コーキングの劣化のサインとして重要です。
コーキング材を打設する目地は、外壁材の伸縮を受け止める役割があります。
コーキング材は、その弾力性を活かして目地に密着し、水の侵入も防ぎます。
この伸縮を繰り返しているうちに弾力性が失われていくのです。
同時にコーキングに含まれている油分を放出し、だんだんと体積が減ります。これが肉やせの正体です。
肉やせすれば隙間ができ、雨水の侵入を許すため、早めに打替えなどの補修が必要でしょう。
ひび割れと剥がれ
コーキング材が弾力を失うと、どんどんと硬化します。
硬く動きがなくなるのです。次に目地の動きを吸収できなくなりひび割れが起こります。
こうなると、コーキングは効果を発揮できない状態で、目地の側面からも剥がれはじめるのです。
最終的には、コーキング材は効力を失い剥がれ落ちます。
こうなると目地の状態だけでなく、外壁材の損傷も見なければいけません。
コーキング材の末期症状でもあると考えましょう。
雨漏りの被害
コーキング材が劣化し隙間ができると、目地から雨水が侵入します。
始めのうちはたいしたことはありませんが、徐々に室内に侵入して被害が広がってしまいます。
雨水は外壁材の裏側に回り込み、居住空間に染み込みはじめ、最終的にはクロスに染み込み、雨漏りし始めるのです。
ここまでくると、雨水が侵入している事実に気が付きますが、見えないところではもっと多くの被害を出しています。
害虫が発生するといった事態も考えられるため、早期に対応しないと、構造部材まで劣化させる危険まで出てくるのです。
外壁の劣化
雨水は内部に侵入するだけではありません。外壁材にも染み込みます。
日本のサイディング市場を見ると、最もシェアを獲得しているのが窯業系サイディングです。
窯業系サイディングは、そのままでは防水性能を持ちません。
目地から侵入した雨水は、サイディングをも侵食して劣化させます。
被害が広がると、最終的には外壁材自体を交換しなければいけない事態にもなるでしょう。
コーキングの補修どころか、もっと大掛かりなリフォームに発展するのです。
増し打ちは是か非か
コーキングの補修方法として、増し打ちという方法があります。
既存のコーキングの上から、新しいコーキング材を打設する方法です。
施工単価としては、撤去費用がかからないことから安価で施工できます。
しかし、本当に増し打ちでいいのでしょうか。
柔軟性を失ったコーキングは、新たなコーキング材によって表面だけは性能を取り戻しますが、厚みは少なく、一部のコーキングは目地の一番外側まで付着したままでしょう。
これでは増し打ちをしても、コーキングの劣化による被害は抑えられない可能性があります。
隙間も埋められないかもしれないからです。
基本は既存のコーキングを撤去し、新たなコーキング材を打設する打ち替えが良いでしょう。
ですが、すべて打替えがいいとは限りません。
たとえば玄関周りなどは、コーキングの裏に防水紙が張ってあります。
撤去するときに破るとせっかく新しくしても雨漏りするかもしれません。うまく撤去できない部分もあるでしょう。
こうした部分は、増し打ちのほうが効果的です。
ALCの場合も、ボード自体に厚みがあるので、増し打ちでも対応できるとされています。
大事なことは、増し打ちが適した場所に施工することです。通常の目地は打替えのほうが適しています。
特定の場所は無理して打ち替えるより、増し打ちがいいのです。
この見極めをすれば、増し打ちも有効な工法になるでしょう。
関連記事:サイディングの劣化は家の寿命につながる!注目ポイントとメンテナンスの方法を解説
外壁塗装と同時施工がおすすめ
コーキングの施工は、外壁塗装と似ており、高所作業が発生します。
工程も複雑で、何度も行き来することから、高所に対応できる足場が必要です。
外壁塗装も同様で、足場無くして施工はできないといっていいでしょう。
特に外壁塗装の劣化のタイミングと近いライフサイクルを持つコーキング材を使うことで、同時施工できるようにするのが一般的です。
工事のロスを減らすためにも、外壁塗装と同時施工すると施工費もお得です。
シンニッケンでも、外壁塗装と同時にコーキングの補修をおすすめしています。
無駄な費用をかけないで済みますし、効率的にメンテナンスできるからです。
まとめ
コーキングは、外壁のみならず住宅の構造としても重要な意味がある部分です。
長く住み続ける家を守るためにも、コーキングは役立っています。外壁塗装とライフサイクルが近いものを選び、施工のタイミングを合わせるのが一般的です。
同時施工すれば足場材や施工効率を考えても、費用削減につながります。
メンテナンスとしても非常に親和性が高いといえるでしょう。
シンニッケンでは、外壁塗装の無料点検をおこなっています。
同時にコーキングの状態確認もできますので、気になるところがあればいつでもお問い合わせください。