サイディング劣化は家の寿命につながる!注目ポイントとメンテナンス、補修の方法を解説
最終更新 : 2024.10.02
外壁材を含め一般建築に使われている材質は、様々な地球環境からいずれ劣化します。これは避けることができない事実です。
しかし、大切な家が壊れてしまうのは誰しも防ぎたいものですよね。
重要なのは、材質の劣化を防ぐことです。
劣化の進行を防ぐためには定期的なメンテナンスが欠かせません。
メンテナンスによって材質の劣化を防ぐことにより、大切なマイホームのライフサイクルを伸ばせるのです。
マイホームの外壁サイディングも同じことがいえます。
劣化が著しい場合は、サイディング本体の交換など大掛かりな工事が必要となります。
もちろん、いずれそのような工事が必要になるケースが生じるかもしれませんが、できるだけライフサイクルをのばすことが、不要な出費も抑え快適な住環境を維持するポイントにつながるでしょう。
今回は、サイディングのメンテナンスにはどのような手法が必要なのか、適切な状態を保つための知識をお伝えします。
サイディングとはなにか
劣化の状態を知るために、「サイディングとは何か」「どんな素材で作られているか」を知らなければいけません。
素材だけではなく材質なども理解しておくと、どんなことに弱いかもわかってきます。
そしてサイディングの役割を含め、メンテナンスが必要になる時期なども理解しておくことが大切です。
サイディングとは
サイディングとは、建築に使われている外壁の板材のことです。いわゆる外の壁ということですね。
日本の建築物の場合、基本は柱を建てて壁を作ります。
この壁の外側の仕上げに多く使われているのがサイディングです。
板状になっていることから、サイディングボードと呼ばれることもあります。
サイディングに使われる素材は、不燃材が中心です。
もし火事になり外壁が簡単に燃えてしまうと、すぐに大火事になり、あっという間に延焼します。
これでは防災管理としてリスクが大きすぎるため、一定の耐火性を持った素材を使うようになりました。
日本の建築の外壁材は、もともと木の板やモルタルセメントを使っていました。
サイディングが登場すると、耐久性の良さだけではなく安価でカラーバリエーションが豊富、さらに施工もしやすいことから、シェアをぐんぐん伸ばしました。
現在では多くの建築物でサイディングが使われています。
サイディングに使われている素材
サイディングに使われている素材は、主に窯業系と金属系に分類できます。
簡単に分類するなら、非金属と金属という分類にもつながります。
それぞれ性質に違いがあり、はっきりとした特徴を持ってます。
メンテナンスにも影響するため、性能を覚えておくと劣化を防ぐことができるでしょう。
窯業系
サイディングのなかでもセメントを使ったものが窯業系と呼ばれています。
窯業は粘土や珪砂、石灰岩など非金属系原料を高熱処理して作りますが、窯を使うため窯業と呼ばれるようになりました。
サイディングの中でもトップシェアを持つのが窯業系です。
製品としての品質が一定になりやすく、施工の負担も軽減できたことが理由ですね。
工業製品として外壁を作っておくことで、現場での加工は最小限となり、工期が短縮できるのも大きなメリットです。
正確に分類すると、セメント質原料と、繊維質原料及び混和材からなる混合原料を成型して作られている外壁材であり、難燃性を持ちながら耐衝撃性も特徴としています。
シェアは外壁全体の7割にもおよび、日本工業規格であるJISにA 5422として規格が定められるようになりました。
ここで大切なのは、セメントの特性です。セメントとは石灰石や石膏を焼いて作った粉末です。
カルシウムとケイ酸の化合物を水などに溶かして固めた製品で、広義としてセラミックス系のサイディングも含まれます。
セメントは、耐久性の良さで知られています。
密度と結合力が高く、熱を通しにくくなるのも外壁として使用する素材のメリットでした。
問題はこの結合を保つための特性です。セメントはアルカリ性の物質で、結合を保っています。
セメントは酸性雨にさらされると中性化して結合力が弱まり強度を失うため、それが劣化につながってしまいます。
実は人間の息も酸性で、室内から直接空気にさらされることがあれば、劣化しやすい状況を作るのです。
窯業系サイディングを使うなら、酸性の影響をできるだけ抑えなければいけません。外壁塗装がまさにその一つ。
酸性の物質の影響で中性化するのを防ぐ意味があるのです。
サイディングとして製品の厚さは12mmから26mm程度で、長さは3,030mmと1,820mmが主に使われています。幅は455mmと910mm、1000mmが主流となりました。
金属系
金属系とは、金属板を使用して作られたサイディングのことです。
窯業系と同様に板状に加工されています。
主な素材としては、塗装溶融亜鉛メッキ鋼板や塗装ガルバリウム鋼板と呼ばれているものが多く、ほかにも、アルミニウム合金塗装板や塗装ステンレス鋼板があります。
金属系サイディングの素材は表面材です。構造を見ると、表面材・芯材・裏面材の3層構造になっています。
芯材には硬質ウレタンフォームなどの断熱材を使い、裏面材にはアルミライナー紙などを使って熱を伝えにくくしているのが特徴です。
つまり、表面は薄い金属板ですが、すべて金属製ではありません。
金属板だけでは熱伝導が高く、室内・室外の熱を簡単に伝えてしまうからです。
金属製サイディングは、窯業系サイディングの1/4程度の重量で、軽量かつ高強度な性能を発揮し、現場で施工しやすい材料です。
表面材を加工することで、デザインはいろいろと作られてきましたが、既存住宅に張替リフォームする場合は、各種既設部材との取合いに注意が必要で自由度としては高くありません。
近年ガルバリウム鋼板がよく使われますが、鋼板にアルミニウム亜鉛合金メッキ処理を施した鋼板です。
アルミニウム処理された上に塗装仕上げしているのでさびに強いですが、全くさびないわけではありません。アルミニウム層が破壊されると、さびてきてしまいます。
つまり、表面の塗膜が劣化、又は傷がつくと、金属製サイディングはさびる可能性があるのです。
構造的に傷がつきやすいため、定期的なメンテナンスが劣化を防ぐので、チェックが欠かせなくなります。
寸法は16mmが主流となり、幅400mm、長さ3030mm、4000mmが基本です。特注で長さを指定できる場合もあります。
特に重要なのは厚みで、耐久性に直結します。
16mm以下のサイディングの場合には、お互いをつないで固定する釘を打った部分がさびやすくなるため、傷からの腐食に注意しなければいけません。
サイディングの劣化を示すサイン
サイディングは、どのように劣化してくるのか?知っておけば安心ですよね。
劣化にも段階があるので、欠陥品や施工不良でもなければ、いきなりサイディングを交換しなければいけないような状態にはなりません。
症状を正確に理解しておけば、メンテナンスの方法や範囲、施工に関する予算なども把握しやすくなるでしょう。
艶引け・色あせ
劣化として、まず現れるのが色褪せです。
サイディングには、塗装が施されます。サイディングの材質から見ても、塗装しなければ風雨に侵食されるからです。
外壁塗装の劣化は、サイディングの寿命に直結します。
色あせが起こる原因はいろいろありますが、主なものは太陽光と風雨です。
太陽光のなかには、色素も分解して物質を劣化させる紫外線が含まれています。
外壁塗装の色も例外ではなく影響を受けるため、時間とともに色あせてくるのです。
風雨も同様で侵食して劣化させます。 色あせた状態は、塗膜劣化の初期段階で防水効果が低下しているのです。
色あせが目立ってきたなら、塗膜の劣化が進行していると考えられるでしょう。
チョーキング
サイディングの表面を手で触ったとき、粉がつくのがチョーキング現象です。
チョーキング現象は「白亜化現象」とも呼ばれています。
チョーキング現象は、チョークに似た白い粉が浮き上がるのが特徴です。
この粉は、塗料に使われている合成樹脂が分解されて表面に顔料が現れたものです。
では、なぜチョーキング現象に気づいたときが、劣化を知るポイントになるのでしょうか。
チョーキング現象の大きな原因は、太陽光の紫外線です。合成樹脂は紫外線を浴びると内部にある水素原子が切断されます。
ここで生じるのがラジカルで、さらに酸素と結合することでペルオキシラジカルを生成するのです。
これが水素原子を抜き取って、さらにラジカルとヒドロペルオキシドを作ります。
これを永遠と繰り返すので、どんどんと樹脂の結合力が弱まり、白い粉上の物質を表面に浮き立たせていくのです。
外に出しておいた物干しの洗濯ばさみが、紫外線が原因でボロボロになったことはありませんか?
プラスチック製品がもろく変わっていく現象と塗装面の分解は同じことが起きているのです。
つまり、太陽の光のなかに紫外線が含まれる以上、劣化を止めることはできません。
太陽光をすべて遮断するわけにもいかないからです。
ポイントになるのがラジカルなので、生成されにくい外壁塗料も開発されてきました。
チョーキング現象は、紫外線がある限り食い止められません。逆にチョーキング現象が見られたら、分解が進んでいることを示しています。
メンテナンスや塗り替えなどが必要になると覚えておけばいいでしょう。
関連記事:こんな症状が出たら要チェック!チョーキング現象とはどんなことか徹底解説
コーキングの劣化
コーキングの劣化は外壁塗装とは直接関係はありません。
しかし、同じような時期に現れてくる上、サイディングの劣化を促進させる可能性がある点に注意が必要です。
まず、「なぜコーキングが必要か」を考えてみましょう。
サイディングは、外壁として1枚で構成されているわけではありません。複数枚のサイディングを組み合わせて外壁を構成します。
窯業系の場合、サイディング同士が接触していると、地震など振動がある度にぶつかり、力が掛かり割れるかもしれません。これでは長く品質を保てないですよね。
金属系サイディングでは、固定するときに重ね合わせますが、隙間ができてしまいます。
ここから水が入る可能性があるため、保護しなければいけません。
もうひとつ、物質は温められると伸び、冷えると縮みます。お互いが近接した状態で温められると、お互い伸びてぶつかる力がかかるのです。
この力を受け止めるために、目地と呼ばれる部分を作ります。
目地は大切ですが、雨水などが侵入してしまいます。
そこで、柔軟性のあるコーキング材を使って埋めるのです。
コーキング材は、場所によって変えます。緩衝材としての能力が必要か、それとも水の侵入を食い止めることが優先かなど、用途が異なるからです。
コーキング材はどのような用途であっても、ある程度の弾力性が求められます。
この弾力性が失われてくると、寿命だと判断できるでしょう。
ほかにも痩せてきたり、ひび割れてきたりするのも劣化のサインです。
密着性も失われ隙間ができたことで、雨水の浸透を許しかねません。劣化も促進されるため、早めにメンテナンスが必要です。
カビ・コケ
サイディングには、必ず表面に塗装面が存在します。塗装面は樹脂でできた皮膜を形成しており、平滑な状態です。
つるつるですので、雨水も流れます。これが自浄作用にもつながるのです。
外壁塗装が劣化すると、平滑な面にも凸凹ができあがり、汚れがたまるのです。
この汚れがカビやコケの温床となり、表面に変化がうまれます。
カビやコケは、なにもないところに繁殖しません。根を張れる場所がなければ定着できないからです。
繁殖が見られるなら、それだけ劣化してきたことをあらわしているため、早めのメンテナンスが必要になるでしょう。
ひび割れ(クラック)
劣化の段階としては、かなり劣化が進行してきているのがひび割れ(クラック)です。
ひびの深さや幅、長さによっても劣化の状態に違いがありますが、外壁塗装がサイディングを守れなくなってきている状況に違いはありません。
初期の段階のヘアクラックは、塗装面の表面に現れます。
まだ構造的に割れているとはいえない状態で、劣化の初期段階です。
これがだんだんと広がると、構造的にも問題が出てきます。
塗装面だけなら塗り替えれば済みますが、サイディング本体にも伸びていくと、交換などの大きな補修が必要です。
ひび割れは劣化の代表的な状態ですが、乾燥などで割れるケースと外壁にかかる力で違いがあります。
外的な力が加わりひび割れてくるなら、力が発生しないようにするか、耐えられるだけの強度を構築しなければいけないからです。
こうなると、外壁だけではなく、土壌も含め原因の追究も必要になります。
さび
さびが見られるようになると、サイディングはかなり劣化が進んでいます。
さびが出る理由は、金属を守るための層が失われているからです。
金属製サイディングの場合には、表面の防錆塗装が役割を果たしていないことが代表的でしょう。
経年劣化だけではなく、飛び石などで傷がつき、さびが出てくるケースもあります。
ピンポイントではなく、全体的にさびが見られるなら、外壁塗装の耐久性の限界を超えている可能性がある状態です。
腐食した部分は元に戻ることはないため、全体的な修繕が必要となります。
反りや割れ
サイディング自体が反ったりや割れてしまう状態もあります。
本来まっすぐでなければいけないサイディングですが、反りだし、剥がれてくると劣化はかなり進んでいる状態です。
反りや割れが出る原因は、窯業系の場合には水分を吸い込み、内部で膨張して押し出されたことが考えられます。
表面部分の水分は日光で乾燥しますが、内部は抜けずに膨張したままです。これが膨張と収縮のバランスを崩し、反りや割れが出てくるのです。
金属系の場合には、劣化が進んで力に耐えられなくなって現れます。構造的な限界ともいえるため交換が必要です。
爆裂・凍害
反りにも近い状態ですが、窯業系の場合、内部の水分が抜けにくくなったところからスタートします。
このときに気温が下がり、内部で凍結すると体積膨張を起こし外部へ向けて押し出すのです。
やがてこの力に耐え切れなくなり、爆発したようにめくれ上がるのが、爆裂や凍害と呼ばれる状態になります。
この状態はサイディングとしての機能を果たせません。補修というより、交換が必要です。
サイディングの劣化のメンテナンスと補修方法
サイディングに劣化の可能性があるなら、メンテナンスや補修が必要です。
劣化を防ぐためにも、メンテナンス方法を理解しておくといいでしょう。
再塗装
基本となるのは再塗装です。
サイディングを守る大事な盾になるのが外壁塗装である以上、劣化を防ぐメンテナンスにもつながります。
劣化は外壁塗装から始まるため、サイディングを守るために再塗装が重要です。
欠損部補修
サイディングのどこかが欠けた場合、欠損部を補修する方法があります。
窯業系では、内部に水分を吸収させないことが重要です
。エポキシ樹脂モルタルなどを使った補修が基本となりますが、水分が入り込まないよう密着させなければいけません。
DIYでできそうに見えますが、乾燥工程や接着など素人の域を超えた作業になりますので、専門業者に依頼することをおすすめします。
コーキングの打ち直し
劣化したコーキングは、撤去して打ち直すことでメンテナンス可能です。
古いコーキングはすべて残さず取り除き2点留めすること、そしてプライマーなど接着剤を絶対に忘れないことが施工をする上で重要なポイントです。
周りにつかないようにマスキングすることも大切ですが、はがすときに縁が切れないよう注意しなければいけません。
DIYでも簡単そうに見えますが、実は難易度の高い作業です。
交換
最終的な段階としては、サイディングを交換する方法が取られます。
サイディング本体の劣化が進み、補修できない状態のときは交換です。
古いサイディングを取り外し、新たに取り付けます。
工事として大規模になり、撤去費用も発生しますし、時間もかかります。
かなりの負担になるので、メンテナンスで済むようにこまめに対処するようにしましょう。
サイディングの劣化で大きな被害を出さないためには
サイディングの劣化は避けられないからこそ、大きな被害になる前にメンテナンスするのが、生活の負担を増やさないポイントです。
点検
定期的に点検することで、変化を記録できるため、経年劣化を明確につかめます。
大きな変化も致命的な損傷になる前に対処できるでしょう。
点検は外壁塗装業者などでも実施しているため、外壁塗装のメンテナンスのタイミングもつかめます。
外壁洗浄
外壁洗浄で汚れを落としてきれいにするだけではなく、劣化の原因となる物質も落とせるため、サイディングの寿命をのばせます。
外壁洗浄すると、劣化している個所もはっきりします。
色あせの状態やチョーキング現象も判明してくるので、早めにメンテナンスするタイミングもつかめるのです。
点検とともに定期的に実施するといいでしょう。
関連記事:外壁塗装の前に高圧洗浄?仕上がりと寿命に影響する重要性と効果
まとめ
サイディングを長持ちさせるためには、定期的な点検が重要です。
専門業者に点検を依頼すると、経験をもとに劣化の診断もおこなってくれます。
もちろん、自分自身で見ておくことも必要ですが、定期的に専門業者が点検することにより、劣化の進行具合も把握しやすくなるのは間違いありません。
点検を繰り返しておけば、費用負担を急に発生させずに済みます。
ある程度予測を立てて行動もできるでしょう。
サイディングを守るためには、外壁塗装が重要な役割を持っています。
塗替えも大事なメンテナンスですので、ライフサイクルに合わせての施工が大切です。