無収縮モルタルのクラック(ひび割れ)が発生する原因は?クラック(ひび割れ)の発生事例や補修方法を紹介
最終更新 : 2024.09.10
無収縮モルタルは、建築や土木工事において非常に重要な役割を果たす特殊な建材です。
従来のモルタルやコンクリートと異なり、乾燥や硬化時の収縮を抑えるため、ひび割れのリスクを大幅に低減します。
本記事では、無収縮モルタルの種類や特徴、一般的なモルタルとの違いについて詳しく解説します。
Contents
無収縮モルタルとは?
無収縮モルタルは、乾燥や硬化時に発生する収縮を最小限に抑えるよう設計された特殊なモルタルです。
通常のモルタルやコンクリートは硬化過程で収縮が生じ、これが原因でひび割れが発生することがあります。
一方、無収縮モルタルは、こうした収縮の影響を軽減するために、専用の添加剤や特殊な配合技術を用いているため、ひび割れのリスクが大幅に低減され、構造物の耐久性や安全性が向上しています。
無収縮モルタルは、高い流動性と強度を併せ持ち、狭い隙間への充填が容易であるため、施工の効率が高まります。
また、優れた接着性により、既存のコンクリートや石材と強固に結合し、補修後の一体感を保つことができます。
このように、無収縮モルタルは収縮を抑えるだけでなく、施工性や仕上がりの品質も高く評価される建材です。
さらに、耐久性に優れた無収縮モルタルは、温度や湿度の変化、酸性雨や塩害などの環境的な要因にも強いため、長期間にわたりその性能を維持することができます。
特に厳しい環境条件下でも信頼性の高い材料として、多くの建築現場で選ばれています。
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無収縮モルタルの種類
無収縮モルタルには、「グラウト」と「パッド」の2つの主要な種類があり、それぞれ異なる特性を持ち、用途に応じて選ばれます。
グラウト
グラウトは、無収縮モルタルの中でも特に高い流動性を持ち、狭い隙間や細かいクラックに容易に充填できるタイプです。
この特性により、施工の効率が高まり、基礎の補強やアンカーの固定、プレキャストコンクリートの接合部など、多くの場面で活用されています。
グラウトは硬化後に高い圧縮強度を持つため、荷重がかかる場所や応力が集中する部分でも安定した性能を発揮します。
また、適度な柔軟性も兼ね備えているため、接合部や補修箇所の動きに追従しやすく、長期間にわたってひび割れの発生を抑制する効果があります。
迅速に硬化するため、作業の継続性が保たれ、施工後の使用までの待ち時間を短縮できるのも大きなメリットです。
これにより、工事全体の効率を高め、スムーズな進行が可能になります。
パッド
一方のパッドタイプの無収縮モルタルは、荷重の分散や振動吸収に特化した製品です。
特に、機械のベースパッドや建物の基礎部分での使用に適しており、圧縮強度が非常に高いため、機械の重量や建物の荷重を効率よく分散させることができます。
この性能によって基礎や機械の安定性が向上し、長期的に安定した性能を発揮します。
さらに、パッドは振動吸収特性にも優れ、機械の稼働時に発生する振動を効果的に吸収し、周囲の設備や構造物への影響を最小限に抑えることができます。
耐久性にも優れており、温度変化や湿度の影響を受けにくく、長期間にわたりメンテナンスの必要性が少ないため、コストパフォーマンスの高い選択肢として評価されています。
また、パッドは施工が容易で、特殊な技術や機材を必要とせず、現場で迅速に設置することができるため、工期の短縮と施工コストの削減にも貢献します。
このように、グラウトとパッドの選定は現場の条件や使用目的に応じて行われ、適切に選ぶことで施工の効率や仕上がりの品質を大きく向上させることが可能です。
無収縮モルタルの正しい選択と使用は、構造物の長寿命化やメンテナンスコストの削減に直結する重要な要素となります。
無収縮モルタルの特徴
無収縮モルタルの特徴には以下などがあります。
高強度
高い圧縮強度を持ち、構造物の補強や耐久性向上に大きく寄与します。
特に、荷重がかかる部分や強い応力が発生する箇所でその力を発揮します。
優れた接着性
既存のコンクリートや石材に対して高い接着力を発揮し、強固な結合を実現します。
接合部の耐久性を高め、長期間にわたって安定した性能を維持します。
施工性がよい
高い流動性と安定した硬化特性により、施工の効率が向上します。
現場での作業がスムーズに進み、手間がかかりません。
劣化しにくい
優れた耐候性と耐久性を持ち、酸性雨や塩害、温度変化にも強い特性があります。
長期間にわたり性能を維持でき、メンテナンスの手間が少ないです。
材料コストがかかる
高品質な無収縮モルタルは、その性能に見合ったコストがかかることが一般的です。
しかし、その長期的なメリットを考慮すると、投資価値があります。
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一般的なモルタルとの違い
無収縮モルタルと一般的なモルタルの違いは、主に収縮性にあります。
一般的なモルタルは乾燥や硬化時に収縮が生じ、ひび割れが発生しやすくなります。
これに対し、無収縮モルタルは特殊な添加剤や配合技術によって収縮を抑え、ひび割れのリスクを大幅に低減します。
そのため、基礎の補強やアンカーの固定、接合部の充填など、ひび割れが許されない場面での使用に適しています。
また、無収縮モルタルは高い圧縮強度と優れた接着性を持ち、過酷な環境下でも安定した性能を発揮します。
温度変化や湿度の影響に強く、劣化しにくい特性があり、酸性雨や塩害といった厳しい条件下でも信頼性が高いです。
一般的なモルタルに比べて材料コストは高くなるものの、長期間の耐久性とメンテナンス頻度の低減を考慮すると、長期的に見て非常に有利な選択となります。
無収縮モルタルクラックの原因
無収縮モルタルでも、適切な施工や管理が行われない場合、クラックが発生することがあります。
以下に、クラックの主な原因を挙げます。
材料の選定ミス
適切でない材料の選定や配合ミスは、無収縮モルタルの性能を損ない、クラックの原因となることがあります。
特に、使用環境に適したモルタルの選定が重要です。
施工不良
不適切な施工手順や施工環境が原因で、無収縮モルタルにクラックが発生する場合があります。
例えば、温度や湿度管理の不足や不適切な混練が問題となることがあります。
乾燥による収縮
無収縮モルタルでも、急激な乾燥により収縮が生じ、クラックが発生することがあります。
適切な養生がクラック防止に重要な役割を果たします。
温度・湿度の変化
温度や湿度の急激な変化は、無収縮モルタルにストレスを与え、クラックの原因となります。
施工環境の調整が必要です。
外部からの負荷や振動
外部からの過度な振動や荷重が無収縮モルタルにひび割れを引き起こすことがあります。
振動を抑え、安定した設置環境が求められます。
塩害
海辺や潮風が強い地域では、塩分が無収縮モルタルに浸透し、劣化やクラックの原因となることがあります。
防塩処理が必要です。
酸性雨
酸性雨による化学的な影響も、無収縮モルタルの劣化を招き、クラックの原因となります。
適切な保護コーティングが効果的です。
無収縮モルタルクラックの発生に影響を与える要因の実例
事例①温度変化によるひび割れ発生
ある住宅では、季節ごとの湿度変動が原因で無収縮モルタルの外壁に細かいひび割れが発生しました。
このケースでは、湿度が高い時期にモルタルが膨張し、乾燥する季節に収縮することが繰り返され、結果としてクラックが進行しました。
湿度の変動が激しい地域では、モルタルが吸水と乾燥を繰り返すことで、収縮や膨張が発生しやすくなります。
これが外壁のひび割れを引き起こす主な原因となります。
モルタルは基本的に無収縮特性を持っていますが、環境要因により微細な変化が発生するため、定期的な保護やメンテナンスが必要です。
事例②振動や外部からの衝撃によるひび割れ
交通量の多い場所に建つ住宅では、道路から伝わる振動が原因で外壁にひび割れが広がった事例があります。
車や工事の振動が長期的に伝わることで、モルタルに小さなストレスが蓄積し、クラックが進行しました。
振動や衝撃が繰り返されると、無収縮モルタルであっても構造的な負担がかかり、ひび割れが発生しやすくなります。
このような地域では、モルタル自体に加えて振動対策が重要となります。
定期的な点検や振動を吸収する工法の導入が有効です。
無収縮モルタルのクラック(ひび割れ)を防ぐためのメンテナンス方法
無収縮モルタルのひび割れを防ぐためには以下のメンテナンスが欠かせません。
- 表面の保護
- ひび割れの早期修復
- 外部からの振動や負荷を定期的にチェック
- 温度と湿度の変動を最小に抑える
それぞれについて詳しく解説していきます。
表面の保護
無収縮モルタルの表面を保護することで、クラックの発生を防ぐことができます。
コーティングや防水シートの使用が有効です。
これにより、酸性雨や塩害からモルタルを守ります。
ひび割れの早期修復
ひび割れが発生した場合は、早期に修復を行うことが重要です。
放置すると、さらなる劣化を引き起こす可能性があり、修復コストが増加します。
外部からの振動や負荷を定期的にチェック
定期的に外部からの振動や荷重をチェックし、必要に応じて補強や振動対策を講じることが大切です。
これにより、クラックのリスクを低減できます。
温度と湿度の変動を最小に抑える
温度や湿度の急激な変動を抑えることで、無収縮モルタルのクラック発生を防ぐことが可能です。
適切な養生や施工環境の調整が求められます。
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無収縮モルタルクラック(ひび割れ)の補修方法
エポキシ樹脂による補修
エポキシ樹脂は、無収縮モルタルのひび割れ補修に最適な材料の一つです。
非常に高い強度と耐久性を持っており、補修後の仕上がりが美しく、目立ちにくいため、見た目を気にする外壁や内装部分の補修に向いています。
エポキシ樹脂はひび割れ部分に深く浸透し、モルタルと一体化することで、ひび割れの再発を防ぎます。
また、硬化後は非常に強固な接着力を持ち、外部からの衝撃にも耐えられるため、長期的に安定した補修効果を得られます。
特に深刻なひび割れや構造的な補強が必要な箇所に適しています。
ポリウレタンによる補修
ポリウレタンは、ひび割れが動的な環境下にある場合に有効な補修材です。
その最大の特徴は、柔軟性と耐水性に優れていることです。
動きのあるひび割れにも対応でき、温度や湿度の変化、振動などによるひび割れの拡大を防ぎます。
特に屋外の環境で使用されることが多く、防水性が求められる部分や長期的な耐久性が必要な場合に効果を発揮するのです。
ポリウレタンは比較的簡単に施工でき、ひび割れの箇所に注入することで内部からしっかりと補修し、外部からの水の侵入を防ぐ効果も持っています。
モルタルによる補修
モルタル自体を使った補修は、ひび割れが浅く、比較的軽度な場合に適しています。
同じ無収縮モルタルを使用することで、補修後の一体感が得られ、外観の美観を損なわずに自然な仕上がりが期待できます。
この方法は、広範囲に及ばないひび割れの補修に適しており、補修後も構造的な強度を保つことが可能です。
無収縮モルタルの特性を活かして、補修箇所の膨張や収縮が少なく、他の部分との違和感が少ないため、長期間安定した補修効果が期待されます。
無収縮モルタルのクラック(ひび割れ)でお困りの方はシンニッケンへご相談ください
無収縮モルタルのクラックに関するお困りごとやご相談は、シンニッケンにお任せください。
専門の技術スタッフが適切なアドバイスと補修方法を提案し、クラックの原因を究明します。
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まとめ
無収縮モルタルは、高強度・優れた接着性・施工性の良さなど、多くの利点を持つ建材ですが、クラックの発生には注意が必要です。
材料の選定や施工、環境管理が重要なポイントとなります。
クラックを防ぐためのメンテナンスや補修方法を理解し、適切な対策を講じることで、無収縮モルタルの性能を最大限に活かしましょう。
クラックの悩みは、シンニッケンまでお気軽にご相談ください。